dlshogiは、水匠に比べて導入手順が複雑です。
dlshogiでは、CPUではなくGPUをメインの計算リソースとして使うので、GPUの種類によって設定方法が変わります。
パソコンが搭載しているGPUがNVIDIA製(RTX3060など)の場合、tensorRT版を使うことになります。
tensorRT版のdlshogiの設定方法を説明します。
ステップ0:GPUがNVIDIA製かを確認する
dlshogiをインストールする前に、確認事項があります。
自分のパソコンが、NVIDIAのGPUを搭載しているか確認してください。
dlshogiの性能を引き出すには、できればNVIDIAのGPUを搭載したパソコンが望ましいです。
- 左下の「Windowsマーク」の横の検索ボックスで「タスクマネージャ」と入力する
- タスクマネージャを開く
- 左上の「パフォーマンス」タブでGPUの情報を確認する
パソコンに搭載されているGPUの確認手順
左下の「Windowsマーク」の横の検索ボックスで「タスクマネージャ」と入力する
タスクマネージャを開く
左上の「パフォーマンス」タブでGPUの情報を確認する
NVIDIAのGPUは、こんな名前で表示されています。
例: NVIDIA Geforce RTX3070 Ti
NVIDIAのGPUではない(CPU内蔵グラフィックやAMDのGPU)場合、こんな表示になります。
例: Intel (R) HR Graphics 530
ステップ1:dlshogiをインストールする
まずはdlshogi本体をインストールします。
dlshogiをインストールする
それではdlshogiのインストール方法です。
まずはGitHubでdlshogiのページを開きましょう。
Assetsのところで、dlshogi-wcsc32.zipをダウンロードします。
ダウンロードすると、ブラウザの左下にダウンロードしたファイルが表示されます。
ダウンロードしたdlshogiのzipファイルは、好きな場所に展開してください。(例:デスクトップやドキュメント)
デスクトップに「将棋」フォルダなどを作るといいと思います。
これにて dlshogiのインストールが完了です。
ステップ2:関連ソフトウェアを導入する
dlshogiのインストールが終わったら、dlshogiで必要なソフトウェアを導入しましょう。必要なソフトウェアは、「CUDA」「cuDNN」「TensorRT」の3つです。
- CUDAをインストールする
- cuDNNをインストールする
- TensorRTをインストールする
CUDAをインストールする
続いて、CUDAをインストールしましょう。
GPUは通常、画面描画用に利用しますが、dlshogiではGPUを計算で使いたいです。
CUDAをインストールすると、NVIDIAのGPUを計算に使うことができます。
CUDAとは、NVIDIAのGPUを計算用に使うためのソフトウェアです。
CUDAはNVIDIA専用のソフトなので、他のGPU(AMD製)では利用できません。
CUDAをインストールすることで、NVIDIAののGPUを計算リソースを最大限発揮することができます。
CUDA Toolkit Archiveページを開きます。
第32回世界コンピュータ将棋選手権バージョンが対応しているのは、CUDA11.1なのでCUDA11.1.1を選びます。
CUDA11.1.1 を押すと、パソコンのバージョンなどを選ぶ画面になります。
画面のように、順に選んでいきます。
3.1GBもあるので、ダウンロードに割りと時間がかかります。
ダウンロードが終わったら、exeファイルを開きます。
exeファイルを実行すると、「このアプリがデバイスに変更を加えることを許可しますか?」というウィンドウが出てくるので「はい」をクリックします。
次のセットアップ画面では、解凍パスを指定できます。
特に変更せずに「OK」をクリックします。
「OK」を押すと、CUDAのセットアップが始まります。
何もせずに待ちましょう。
システムの互換性チェックがされています。
これも自動で完了します。
この後、ソフトウェアの使用許諾同意画面になります。
スクロールして一読したあと、「同意して続行する」をクリックします。
「同意して続行する」を押すと、インストールオプション画面になります。
「高速」になっていることを確認して、「次へ」をクリックします。
「理解して、インストールを続行する」と英語で書いてあります。
チェックを入れて、「NEXT」をクリックします。
しばらく自動でインストールが進みます。
特に操作せず待ちます。
「次へ」をクリックします。
次の画面になったら、インストールは完了です。
続いて、cuDNNのインストールをしていきましょう。
NVIDIA アカウントを作成する
cuDNNとtensorRTをインストールするために、NVIDIAアカウントを作る必要があります。
すでにNVIDIAアカウントを持っている場合はそのアカウントを使えばいいので、次の「cuDNNをインストールする」に進みましょう。
持っていない場合、こちらのページからNVIDIA アカウントを作成できます。
アカウントに使うEmailアドレスを入力し、「NEXT」ボタンをクリックします。
次に、パスワード入力画面になります。
入力のやりかたはこんな感じです。
- パスワードを入れる
- 同じパスワードを手打ちする
- チェックを入れる
- チェックを入れると画像問題が出てくるので回答する
- クリックしてざっと目を通す
- 「Create Account」を押す
「Create Account」をクリックすると、入力したメールアドレスに確認メールが届きます。
入力したメールアドレスの確認が必要になりますので、確認メールを開きます。
届いた確認メールを見て、「電子メールアドレスの確認」ボタンを押して、有効化します。
有効化すると、画面が進みます。
特に何もせず、「登録する」をクリックします。
次に、利用者情報を登録する画面になります。
ある程度適当に埋めても大丈夫です。
- ①-1 first Name(名前):名前を入力する
- ①-2 Last Name(名字):名字を入力する
- ①-3 Job Role(役職):役職を選ぶ
- ①-4 Organization/University Name(機関名/大学名):適当に入力でOK
- ①-5 Organization URL(機関のURL):任意なので入力無しでOK
- ①-6 Industry(産業分野):分野を選ぶ
- ①-7 Location(国):国を選ぶ
- ②Development Areas of Interest (関心のある分野):1~3個チェックする
- ③submit(提出):②まで埋めたら押す
「submit」を押して、下のような画面になればログインが成功しています。
cuDNNのインストールに進みましょう。
cuDNNをインストールする
cuDNNをダウンロードするには、NVIDIAのdeveloper(開発者)プログラムメンバーになる必要があります。
簡単にできますので、まずはdeveloperプログラムに登録しましょう。
NVIDIAのdeveloperプログラムに登録する
まずは、cudnnのページを開きます。
開いたら、「Downlord cuDNN」をクリックします。
Developerプログラムに登録している場合はインストール画面になります。
こちらの「cudnnをダウンロードする」に進みましょう。
Developerプログラムに登録していない場合、登録が必要です。
「Join Now」(今すぐ登録する)をクリックします。
「submit」(登録する)をクリックします。
これでDeveloperプログラムへの登録が完了です。
Developerプログラムに登録できているかは、右上のアカウントマーク(人のアイコン)から確認できます。
cuDNNをダウンロードする
Developerプログラムに登録したら、cuDNNをダウンロードします。
dlshogiで使うのは、CUDA11.1に対応したcuDNNなので、cuDNN v8.2.1を選びます。
「Download cuDNN v8.2.1 (June 7th, 2021)」をクリックします。
- 「Download cuDNN v8.2.1 (June 7th, 2021)」をクリックする
- 「cuDNN Library for Windows (x86)」をクリックする
ブラウザの左下に、zipファイルがダウンロードされたら成功です。
場所はどこでもいいので、ダウンロードもしくはデスクトップなどに展開します。
この後は、cuDNNをCUDAのインストール先に配置していきます。
cuDNNをCUDAの下に配置する
cuDNNは、CUDAの下の正しい場所に配置する必要があります。
ダウンロードしたcuDNNのファイルを、CUDAフォルダの11.1以下にそのまま貼り付けることになります。
まずはエクスプローラで、CUDAのフォルダとcuDNNのフォルダを開きましょう。
・CUDAのフォルダはC:\Program Files\NVIDIA GPU Computing Toolkit\CUDA\v11.1
・cuDNNのフォルダは展開した場所の例:C:\Users\【ユーザ名】\Downloads\cudnn-11.3-windows-x64-v8.2.1.32\cuda
操作の手順です。
まずcuDNNのフォルダを開き、\Downloads\cudnn-11.3-windows-x64-v8.2.1.32\cuda
以下の全ファイルを選択します。
全選択は以下のどちらかの方法でできます。
①bin
、 include
、lib
、NVIDIA_SLA_cuDNN_Support.txt
の4ファイルを、コントロールキーを押しながらクリックする
②「Ctrl+a」(コントロールキーを押しながらaキーを押す)→「Ctrl+c」(コントロールキーを押しながらcキーを押す)
貼り付けようとすると、確認のウィンドウが出ますので「すべての項目にこれを再実行する」にチェックを入れ、「続行」をクリックします。
「続行」を押すと、CUDAフォルダの下にcuDNNが貼付けされます。
これで、cuDNNのインストールは完了です。
続いて、TensorRTのインストールに進みましょう。
TensorRTをインストールする
dlshogiでは、tensorrt7を使います。
tensorRTとは?
NVIDIAが提供する、ディープラーニングモデルのランタイムモジュールです。
NVIDIAのGPUを使って、高速な推論ができます。
まずは、tensorRTのダウンロードページを開きます。
tensorRT 7をクリックします。
初回はアンケートが求められますので、適当に回答します。
回答が終わったら、「submit」(提出)をクリックします。
「submit」を押すと、インストールするバージョンを選ぶ画面になります。
「I Agree To the Terms of the NVIDIA TensorRT License Agreement」(ライセンス項目に同意する)にチェックを入れるとバージョンが選べます。
「TensorRT 7.2.3」の「TensorRT 7.2.3 for Windows10 and CUDA 11.1 & 11.2 ZIP package」をクリックします。
ダウンロードしてきたZIPファイルは好きな場所に展開します。
今回は、C:\Tools\
に展開することにしました。
展開の手順はこんな感じです。
- ダウンロード:ダウンロードをクリックする
- TensorRT-7.2.3.4.Windows10.x86_64.cuda-11.1.cudnn8.1.zipを選択する
- 上の方で「圧縮フォルダツール」をクリックする
- 「すべて展開」をクリックする
- 展開先のフォルダを選ぶ(今回は
C:\Tools\
を指定) - 「展開」をクリックする
展開後、このようになっていたら、tensorRTのインストールは完了です。
続いて、環境変数の設定をしていきましょう。
環境変数を設定する
関連ソフトウェアのインストールは終わりましたが、環境変数でパスを設定する必要があります。
環境変数パスとは?
Windowsがプログラムを探すときに、名前で探せるようにする設定です。
CUDAの場合、cuDNNやtensorRTを探して使いますので、環境変数パスの設定が必要です。
まずは、Windowsの設定を開きます。
左下のWindowsマークから、「設定」をクリックします。
設定画面が開きます。
「システム」をクリックします。
システムの画面で、以下のように環境変数を開きます。
- 左下の「詳細情報」をクリックする
- 右側の「関連情報」のうち、「システムの詳細設定」をクリックする
- 開いた「システムのプロパティ」で下側の「環境変数」をクリックする
環境変数が開いたら、こちらの2つのパスを追加する必要があります。
- CUDAのbin:
C:\Program Files\NVIDIA GPU Computing Toolkit\CUDA\v10.2\bin
- tensorRTのlib:
C:\Tools\TensorRT-7.0.0.11\lib
(C:\Tools
に展開した場合)
これらは、エクスプローラで開き、パスのコピーをすると確認できます。
- 「ローカルディスク(C:)」をクリックする
- TensorRT-7.2.3フォルダの、libまで移動する
- 上部分の窓を押すとパスが表示されるのでコピーする
TensorRTと、CUDAのパスが分かったら、環境変数に追加します。
- ユーザー環境変数の「Path」をクリックする
- 「編集」をクリックする
- 右側の「新規」をクリックする
- CUDAとtensorRTのパスを追加する
追加後はこのようになりました。
編集が終わったら、「OK」を押して、 ウィンドウを閉じます。
この後、パソコンを再起動しましょう。
環境変数の修正は、再起動されないと適用されない
将棋GUIに登録してdlshogiを使う
関連ソフトウェアのインストールと環境変数の編集まで終わったら、dlshogi導入はほぼ終わりです。
このあとは、将棋エンジン(将棋GUIか将棋所)にdlshogiを登録していきます。
まずは将棋GUIを開きます。
まだ将棋GUIをインストールしていない方はこちらの手順で導入してください。
「ツール」→「エンジン設定」をクリックします。
「追加」を押すと、追加するエンジンの場所を聞かれるので、dlshogi_tensorrt.exe
を指定します。
選択したら「開く」をクリックします。
次に、パラメータ設定画面になります。
こちらのページの説明を参考に、数値をいくつか推奨設定に変更します。
こちらの2つの数値は調整しておくほうがよいです。
・DNN_Batch_Size
:検討用に使うなら256にする。デフォルトで128。
次のUCT_NodeLimith
は、利用するメモリの量を指定します。
・UCT_NodeLimit
: パソコンのメモリが16GBなら5,000,000(500万)
パソコンのメモリが8GBなら2,500,000(250万)
くらいにする。
デフォルト(1,000万)の設定だと「2kB×1,000万=20GB」の20GBを使用する恐れがある。
2つの数値を変更したら「OK」をクリックします。
エンジンについても「OK」をクリックします。
これでdlshogiのエンジン登録が完了です。
将棋GUIでdlshogiを対局や検討に使ってみてください!
Q & A
こちらのページの最後に記載しています。
まとめ:dlshogiの導入方法は複雑だが、GPUを活かして強力!
dlshogiはGPUを使った計算で強力な将棋AIです。
ぜひRTX3070以上の強力なGPUを搭載したパソコンで、dlshogiをフル活用してください!
cudnnのページを開いた時、画像の様な画面になりません。Downlord cuDNN Libraryをダウンロードしましたが登録した事になりますか?
コメントありがとうございます。
NVIDIAの公式サイトは画像から変わっている可能性があります。
NVIDIAアカウントの登録は、cuDNN Libraryをダウンロードするのが目的ですので、「cuDNN Library for Windows (x86)」をダウンロードできていればOKです。